「あーあー、オッケ。ランプ付いてるし大丈夫だろ」
「姉さんなんでテレコなんか持ってるんですか?」
「趣味だ。っつかてっめえ、木島逃げやがって」
「あ、蹴らないですいません」
「まあいい。それよりも飛沫だ飛沫。目が遠く見だしたな」
「何かあるんすか?」
「まあ、なんてか、楽しいことだ。琴音ちゃん。飛沫どうだ?」
「最初言葉に反応していませんでしたけど、今は段々と反応するようになっています。武君、イブキ君は酔ったらどうなるんだ?」
「どうなる?いや、俺もこいつがここまで酔ったの見たことないから。雫さん。どうなるんですか?」
「んまあ、早漏だなお前ら。早いときらわれっぞ。・・・・・・・・・まあ見とけ。おい、イブキ」
「・・・・・・・・・・・はい。何でしょうか?」
「よし。この前、勝手にお前の絵を持っていったのだが許してくれるか?」
「・・・・・・・・・・・・何を怒る必要があるのでしょうか?僕はそんなことに憤りを感じていません。許す以前の問題ですよ。僕のものは貴方のものです。僕が怒ること自体ありませんよ」
「ウヒヒヒヒ。よしよし。ということは、お前のものが勝手になくなっても、構わないということだな?それを約束するよな?」
「はい。勿論です」
「・・・・・・・・・・・・・・?何ですかこれは?」
「まあ、見ての通りというか、分かりづらいかな。こいつ酒に飲まれると心が広くなるんだよ。仏並みに。ちょっと見て・・・・・・・・・・・・・ホレ」
「うわ、本気で右頬にビンタした!キンちゃんキンちゃん!」
「ちょ、姉さん。やりすぎですよ!」
「・・・・・・・・・・・・ホラ、飛沫みてみ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?キンちゃんキンちゃん!イブキ君が左頬さし出してる!」
「こいつは神か!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・こいつは今何をされても受け入れてくれるんだよ。典型的な日本人イエスマンの誕生だ。エセキリストだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「何で誰も喋らん?」
「いや、イエスマンになったからって何が楽しいのか・・・・・・・・・・」
「楽しいのか?・・・・・・・・・・・・・・・楽しくないよな」
「特に楽しいということもないですよ」
「キンちゃんキンちゃん!イブキ君死んでしまうん?」
「いや、死なないけども。・・・・・・・・・・・・・・まあ別に楽しいって感覚には程遠いような。普段のツッコミが欲しいよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前たちは鬼畜って言葉を知らないな。木島。お前、飛沫に何かお願いあるか?」
「お、俺っすか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んまあ毎日暇だからたまには遊んで欲しいなと。今まで首を縦に振ってくれたことないんですよね。家で絵書くから嫌だって」
「おい、飛沫。木島と遊んでやれ」
「はい。それでは木島君。いつ遊びに行きましょうか?僕は基本的に毎日暇なのでいつでもいいですよ。来週一緒に遠出でもしましょうか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・おおおおおおおおお!え、ん、そ、それなら来週どっか行こうか!」
「はい。予定空けておきますね」
「次、武」
「次・・・・・・・・・・・ここで煙草吸ってもいい?」
「何を水臭い。いちいち聞かなくてもいいですよ。そこで吸ってください」
「そこで吸ってください・・・・・・・・・マジか。んじゃま」
「次、花ちゃん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「姉さん、花ちゃん寝てる」
「ツマランな。次、琴音ちゃん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでもありなんですかね?」
「おう。死ねといわれたら死ぬよ」
「服脱げとかでも?」
「・・・・・・・・・・・・・・・いいけどみんなツマランね。おい、飛沫。服脱げ」
「はい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょ、イブキ君!パンツはいいパンツは!」
「え、・・・・・・・・・・・・・・・そうですか。分かりました」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだ、皆ツマランな。せっかく飛沫で遊べるのに。普通のことしかさせていない」
「いや、まあ、酔っ払った相手に何かすると罪悪感が」
「んなもん糞だ。酔っ払った奴が悪い。・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、梓ちゃん何も行ってなかったね」
「ええ。忘れられてると思ってました」
「うん。そうなんだけどね。君は顔が真っ赤だな。飲みすぎ。別にいいけど。それで何か願い事は?」
「・・・・・・・・・・・・自分でいいます」
「そうか。おい、飛沫、あっちに行ってやれ」
「はい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうした梓ちゃん?」
「いえ、・・・・・・・・・・・・・・ではイブキさん。イブキさんって今付き合ってる方がいるのでしょうか?」
「いないですよ」
「よかった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それでは私と交際してください。好きです」
「いいですよー」
「よかった。それでは今後よろしくお願いします」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?梓ちゃん?」
「ヒャハハハ。中々鬼畜だな。梓ちゃんは」
「何ですか?」
「いや、えっとね、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、それで付き合えても嬉しいものなの?」
「今後の私と一緒にいてイブキさんがどう思うかですね。私は普段隣に入れる資格を得るだけでも嬉しいです」
「そうか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし。イブキ君。私と付き合え。交際しろ。お前が好きだ」
「いいですよー」
「よし。ありがとう。・・・・・・・・・・・・・・・・・・しかしどうするのだ?イブキ君。二人ともいい返事をもらっているのだが」
「んー。どうしよう。二人で決めて」
「ヒャハハ。飛沫が一番の鬼畜かもな」
それから後の会話は、僕たち三人を祝福するかのような言葉だった。花中島意外。花中島は「それはやばくないですか」と、僕のフォローに回ろうとしているのだが、姉さんがそれを黙らせていた。木島は僕にうらやましいを連発し、姉は僕を笑いながら祝福する。キンちゃんと梓ちゃんはテレながら何かを話していた。
そして最後の会話。
「イブキ君がよければ、二人とも付き合うって言うのはどうだい?」
「いいよー」
僕はテレコのスイッチを切った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやいやいや。これは無しだな。ないない。ありえない。聞いたことない。」
そう。僕があわてることはない。これは無しだ。いろんな意味で。会話の内容が全てグダグダ、そして尚且つみんな酔っ払ってる。こんなものが認められるわけがない。
「ほう、何がなしなのか?飛沫?・・・・・・・・・・・・・こら、木島寝るな。今から飛沫が怒り出すぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・もうね、眠いんですよ。何時間立て続けに飲んでると・・・・・・・・・・・・・。尚且つイブキはエロゲーの主人公並みにハーレムエンド。俺は不貞寝したいですね」
「すげえよな。二人同時に明言して付き合うなんて」
「いや、木島よ。僕の話を聞いてくれ。姉さんも。そもそも、お酒を飲んだ席での会話だ。僕、梓ちゃん、キンちゃん、共に正常な判断能力がない。ほら、この時点でさっきの約束は不成立だ。わかるかい?わかるよね?盟友。そして、道徳として、二人同時に付き合うことはゆるされないだろ?」
「お前の抵抗は綺麗でかわいい女の子二人に同時に告白された時点で不成立だ。死ね。勝手に言い訳してろ。俺は寝る」
そういうと木島は僕が寝ていた、二人の間に割り込んで寝ようとしたのだが、姉さんが殴ってそれを阻止した。床に倒れそのまま眠り込む木島。物凄くお酒臭い。
「というのが、お前の盟友の意見だそうだ。よかったな。二股やろう」
「いやいや、ちょっと待って。だから、僕はね、そのような事を望んでいない」
そういうと姉はテレコを巻き戻して、再度僕が交際に関してOKを出したところを再生する。
僕の酔っ払った明るい声。「いいよー」と答えている。
「だからさ、僕は酔っ払ってるじゃん」
「酔っ払ってたら許されるってんじゃ、この世の浮気の何割かが許されるな」
「いやいや、姉さん。落ち着いて」
「いや、お前こそ落ち着け。そして今の現状を見ろ。お前たちの格好を見ろ」
僕はパンツ一枚。そして彼女たちは下着のみ。
「二人に子供が出来ても、それでも『僕は酔っ払っていたから』と言い張るのか?そしてだ、もし子供ができていなくても、高校生と同居人。その二人と一緒に寝たことに対して全く責任を感じないのか?」
ね
ネ
ネタ?子供?
僕があえて直視することを拒んでいた現実を突きつけられる。彼女たちの服装が下着姿なのでギリギリ大丈夫な展開を予想していたのだが・・・・・・・・・・・・・・。男と女の関係までいっていたというのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・ここは勇気を出して聞かなければ。聞きたくないけど。
「寝たのか?僕が?彼女たちと?」
姉さんは神妙な顔つきになってゆっくりと答えた。
「うん。しっかりと寝てたね」
僕の目を見つめながら真面目に答える。
「・・・・・・・・・・・・・・・・アレ(H)までやったってこと?」
姉弟間でこのようなことを話したことがなくて、僕は少し気持ちの悪さを感じながら姉さんに聞く。
「うん。あれ(腕枕)までやった」
今度の姉さんは笑いながら答えた。
「彼女たちのどちらかに?」
「いいや、二人同時に(腕枕を)やった!」
僕の罪はここに確定した。最低だ。そんなのエロ本の中でしか聞いたことない。僕は。友人としての地位を確立していたキンちゃんに対して、そしてまだ高校生の梓ちゃんに対して。僕は最低なことをしてしまっている。
「ね、姉さん。僕にもお酒頂戴」
「ほい」
そういうと姉さんは足元に転がっていたテキーラを僕に渡す。
喉を焼くような熱さ。一瞬咳き込みそうになるが、それに僕は耐える。
「・・・・・・・・・・・・・・僕って最低だ」
「いいんじゃない?二人とも(腕枕)気持ちよさそうだったし」
その言葉を聴いて僕は更に落ち込んだ。
何だ、この不道徳な人間は。倫理観にかけている。しかもそれをお酒のせいにしようとしていた僕がいる。そこまでの関係に行っていたとは知らなくてもだ。
世界が終わった気がした。
いや、僕の世界だけが終わっているのかもしれない。
僕はコップを一気に空にする。
布団で寝ている二人がモゾモゾと動き、そしてほぼ同時に目を覚ました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・おはようございます。イブキさん」
「・・・・・・・朝が早いなイブキ君」
二人とも眠い目を擦りながら僕に笑顔を向けた。