スパーンと小気味いい音と少しの痛みで目が覚めた。光が目に入る。
「な、何事ですか?」
顔を上げながら思わず声が出てしまう。目の前には長髪の女性が立っていた。
「何事って・・・いい加減に起きなさいよ。私の授業なんだから」
音と痛みは目の前にいる女性の手にある丸めた教科書から生まれたものらしい。
起きたばかりだからなのだろうか、頭がハッキリとしない。先ほど見たものは夢なのだろうか。
辺りを見渡す。・・・・・・いつもの教室の風景だ。目の前にいるのは俺の担任の鳶崎カンナ先生だった。ほっと胸をなでおろす。
「何だ・・・・・・先生のコゴトか」
「・・・上手い」
そう言うと同時にまた頭を叩かれた。痛くは無い。
「あんた達も目を覚ましなさい!」
教室中の窓ガラスが割れるんじゃねえの?と思うような大声で一喝する。
周りを確認すると、絵流、神崎、空蝉、田尾さんの四人が寝ていた。
先生の一声で皆体を震わせて起きた。絵流に関しては顔を上げたあとまた寝直したわけだが。
「・・・ねえ、私の今日の授業面白くなかった?」
先生は教壇に戻り、一番前に座っている生徒に話しかけている。その生徒は「いや、いつも通り面白かったですよ」と答えていた。俺もこの先生の授業は面白いのでいつもは起きているのだからその通りなのだろう。いつ寝たか記憶がない。・・・まあ授業中の居眠りというものはそんなものなのだが。
先生は「そのはずよねえ」と言いながらまた授業を再開した。時計を確認すると授業が始まってからまだ十分もたっていない時間だ。いつもの俺ならありえない。少なくとも最初の十分は寝付けないからだ。
今さっき起こされた三人を順に見渡す。それぞれが何らかの合図を送っていた。田尾さんに関しては先ほどの格好を思い出したのか赤面していてとてもかわいかったので、携帯電話で写真を撮った。その直後に先生のチョークが飛んできて、尚且つ携帯電話授業終了までを没収された。
その後は特に怒られることも無く、俺だけ普通に廊下から授業を見学し授業は終わった。四時間目だったので昼休みに入る。
いまだに寝ている絵流を起こす。ボサボサの髪をかきあげながらポケットから携帯電話を取り出し時間を確認する。時間を確認した後、再びポケットに携帯電話を戻して、今度は鞄から弁当を取り出す。ざっと三人分はあろうかというほどの大きさの弁当箱一つとそれの半分くらいの大きさの弁当箱を一つ。こっちの弁当箱にはおかずが入っている。手際よく机の上に広げていく。さっきの出来事に対してなんら反応を示さないのでそれを遮る形で話を振った。
「それも大事だけどさ、今さっきお前夢見てなかった?それの話しない?」
絵流は頷くとおかずを口の中にほお張った。聞いちゃいねえ。ムカついたのでおかずを一つ取り上げて食べた。「おい」と絵流が文句を言うので俺も言い返した。
俺が絵流とゴチャゴチャしていると、空蝉が健康補助食品を手に俺達のところへとやってきた。カロリーメイトにヴィダーインゼリー・・・キムタクかっつの。その行為立ち振る舞い存在自体がムカつく。俺と絵流の横に席を着けるように椅子を用意して座る。
・・・やっぱりこいつも同じ夢を見ていたんだろう。今まで話しさえしたこと無いのにまるで今まで毎日一緒に昼飯を食べてます的な雰囲気を出して俺らのところに来た。
「い、今さっき君達もあの夢みたいなの見てただろ?」
カロリーメイトの箱を開け、ポロポロと中身を落としながら喋りかける。・・・緊張してんのか?
「・・・・・・やっぱりお前も見てたのか?」
俺が空蝉に話しかけると頷いた。いつもの夢心地などではなく、先ほどの体験は現実としか思えなかった。思い出すとくっきりと先ほどの事を思い出せる。田尾さんの下着は白色でした。予想を裏切らない清純さがよし。
絵流が話しに参加する事も無く、モグモグと飯を食べていたので俺も自分の席に戻って弁当を持ってきた。飯でも食いながら空蝉と話をする事にしようと思った。
俺が弁当箱を用意するのを見計らったかのように田尾さんと神埼も同時に俺達の所に集まった。田尾さんは弁当を用意しているが神崎は手ぶらでやってくる。きっと購買部のパン派なのだろう。早く行かないと売り切れるぞ、と忠告しようと思ったのだが不良は何に対して文句をつけるか分からなかったので黙っていた。不良は怖くて意味が分からないので嫌いだ。
「あの・・・矢倉君もさっきあの夢見てたんだよね?」
「あ、やっぱり田尾さんも?」
顔を赤らめながら田尾さんが話しかけてくる。俺に対して意識をしていて顔を赤らめているのか、それとも俺達に下着を見られたのを思い出して顔を赤らめているのかどちらなのかは分からなかった。出来れば前者がいい。まあありえない話だとは思うが。意識する以前の問題で、俺は高校生になってから田尾さんとほとんど会話を交わした事が無い。
「やっぱりお前らもか」
神崎は手をポケットに突っ込みながら話しかけてくる。ほとんど面識の無い人に対して「お前ら」という風な呼び方はどうかと思ったが「ああ」と一言だけ返しておいた。好きな人が目の前にいるのだからへりくだるのもどうかと思う。やっぱり女の前ではカッコつけたい。
「まあ、ご飯でも食べながら話そう」
絵流が珍しくまともな発言をして机を四つくっつけた。見下ろされながらご飯を食べるのが嫌だったのであろう。
それぞれ適当に席に着いて食べるものを広げた。偶然かどうかは分からなかったが、先ほどの夢の中で座っていた順に席に着いていた。神崎だけがご飯なし。買ってくればいいのに。
皆がそれぞれ箸を動かす。俺が一口目を食べようとした頃に絵流はご飯を食べ終わっていた。鞄の中から一、五リットルのペットボトルを取り出し、中に入っているお茶をいっきに飲み干した。・・・何かお茶に恨みでもあるじゃないか?とでも思うような飲みっぷりだ。
それぞれがそれぞれに黙々とご飯を食べる。絵流は机に伏せ、神崎は腕を組んでジッと宙を凝視する。誰も一言も発しようとしない。・・・・・・何だこの間?
「・・・・・・それで、皆さん。何か用?」
とうとう我慢し切れなくて俺が言葉を投げかけた。絵流以外の三人が顔を見合わせる。
「あ、あの・・・先ほどの事についてですけど」
「そう、さっきの事なんだが」
「やっぱりお前達も見てたんだな。また悪の秘密結社かよ」
・・・それぞれが口にする。俺としては偶然皆同じ夢を見たと言う事で片をつけたいのだがそうもいかないらしい。俺としてはそんなことよりも、さっきのグレイが言っていた、それぞれの説明が本当なのかを知りたい。後、田尾さんのパンツは本物だったのかだ。俺に対するビックリ企画か何かと思っていたのだが、夢の中までいじられるようなビックリは聞いた事が無い。
「まぁそれも大事なんだろうけど、それよりも今さっきの皆の説明は本当なの?」
一応聞いてみた。ここで簡単に「ハイ」とそれぞれが口にしたとしても俺が信じられるかどうか分からないのだが。
「あ、あの・・・・・・それに関してはですね・・・・」
田尾さんは口をゴニョゴニョと動かしどうにかして誤魔化そうとしている。誤魔化そうとしているということはやっぱり本当のことなのだろうか。確か「魔女っ娘」・・・そりゃあ、例え嘘でも信じたい。信じたいというかその姿を見てみたい。嘘でも本当でもいいから。・・・今日放課後にでもデジカメ買いに行こうかな。信じる信じないの問題ではないような気がする。ここでもし信じなかったとしてデジカメを買わずに、本当に目の前に「魔女っ娘」の姿で田尾さんが出てきたら、俺は今後の人生を一生後悔するかもしれない。嘘だったとしても今後の人生でデジカメを使う機会はたっぷりとあるだろう。
「・・・・・・まぁ、大筋認める」
神崎はすぐに頷いた。鵜呑みにするとこいつは改造ヒーローで、俺達の知らないところで隠れて戦っていたわけか。少しはいい奴なのかと思ったのだが、神崎のほうに目を向けると切れ長の目で睨まれたので俺は眼を逸らした。いい奴でも不良は嫌いだ。・・・しかしこいつが金髪なのも改造による副作用なのかもしれない。不良と決め付けるのは俺の間違いなのかもしれないが・・・それでも見た目が怖いのは嫌だ。
「ま、まぁ僕も大筋認めるよ」
こいつは忍者だったか。まぁ名前からして忍者っぽいのだが。そんなことよりも気になる事があった。
「友達募集中もか?」
俺がその質問をした途端に顔をひくつらせた。しかし否定はしない。
「あ、そう」
俺は特に反応する事も無く返事を返した。分かり易く顔の表情が変わる空蝉。イケメンは敵だ。しかしながら・・・こんな反応をされるとちょっとは悪いかなぁって気になってくる。だからと言って特に何をするわけでもないのだが。
「ほら、絵流、起きろ。お前は本当に殺し屋なのか?」
絵流の体を揺すって起こす。まだ眠りが浅かったようですぐに起きた。携帯で時間を確認する。髪の毛が邪魔で表情は確認できなかったが特に雰囲気が変わった様子は無かった。
「俺は悪人しか殺さない」
特に声から感情の変化は読めなかったがいつも通りの感じで返事を返した。つまり当たり前に答えたわけだ。・・・人殺しねえ。しかし悪人しか殺さない。いいことなのか悪い事なのか分からないが・・・現実感が無くて困る。どうしようもない。
「ってことはさ、君たちなんかそれぞれ特殊能力とかあるわけ?」
「誰か殺して欲しい奴とかいるのか?」
絵流がすぐに反応する。
カカカカカカカカカカカカカカカカカカカッ
するといきなり空中から数十本のナイフが降ってきた。弁当を傷つけないような形でそれぞれを避けるようにナイフが机に立つ。様々な形をしているがそのほとんどがサバイバルナイフだった。
「・・・な、なんだこりゃ?」
「・・・能力見せたほうが早いだろ?」
「見てもわかんねえよ」
絵流が俺を見ながら話す。いや、こんなの見せられても分けわかんねえし。なんだ?マジックか何かか?そんなことよりもこの机の持ち主達が悲惨に思える。テスト中は紙に穴開き放題だろうな。クラスの平均点が下がりそうで俺はラッキーだけど。しかしよく分からない能力だ。周りの目につく前にナイフを隠さなければ。
「俺はここでは出来ない」
「あ、あの、私もここでは無理です」
神崎と田尾さんが順に答える。・・・ってかここでいきなり見せるのは絵流くらいなものだ。何も考えていない。
「んまぁそれなら今度機会がある時にでも」
デジカメを持っていないから何かあった時に何もできないのは困るので今は別に言いと思った。
「あの、僕は隠密行動とか得意。能力とかは特にないよ」
こいつは確か忍者だったはず。忍者なのに特殊能力がないとかは嘘としか思えない。隠しているだけなのだろうか。
「それなら来週のテストの問題用紙盗んできてよ。どのくらいの能力か見てみたいな」
適当に言ってみた。
「う〜ん。・・・五分待ってて」
そう言うと目の前から空蝉が消えた。・・・・・・今日はビックリ人間大集合だな。
きっかり五分前に目の前に現れた。テスト用紙五枚が目の前に置かれる。
「まぁ、こんな感じだけど」
「お、おう。すごいな」
・・・こいつは使える奴だ。昼休みの職員室には先生達がたくさんいるだろうし、そう簡単には盗めるわけが無い。こいつに頼めばどんなものでも盗んできそうだ。・・・しかしながら何でも屋と言っていたからギャラが発生しそうだけど。
・・・・・・この調子だと田尾さんと神埼も本物っぽいな。隠そうとしている様子が一切見られない。
・・・・・・オッケー。それは分かった。分かったのだが、
「わかったよ。皆にすごい能力があるのは分かった。それで、俺達はどうすればいいの?」
根本的な疑問だ。ぶっちゃけだから何だという話だ。俺は、もしくは俺達は何もしらねえ。俺にわかったのはこいつらが本物だ、という事だ。それだけだ。それ以上何をすればいいのか何にも分からん。
「というわけで神崎。君はどうしてたの?」
ここは元ヒーローに聞くことにしよう。何か打開策でも言ってくれるだろう。・・・呼び捨てにしたけど大丈夫か?
神崎はギロっと俺のほうを向いた。睨まれてるよな?これは。
「・・・・・・基本は相手が出てくるまで待っている。どういう風な策略で相手が出てくるかを見て相手の傾向を掴み、自分の力量を把握し、自分がやれる事をやってどんどん相手を削っていく。相手も馬鹿じゃないから国が感づかないようにやってるんだよ。国家レベルで潰されにかかったらそんなものプチンだ。だから戦力を蓄えつつ、国に取り入ろうとしている。そこをどんどん潰していって最終的に元を断つ。・・・という感じだ」
「そ、そうか」
こいつマジで戦ってきたんだな。戦い方が具体的だ。
「とは言っても、俺はガムシャラに戦っていただけなのだが結局はそうなっていたという話だ。問題を突きつけられたらやる事をやる。それだけだ」
「た、大変だったんだな・・・」
「まあな」
神崎はため息をついた。・・・ハードな人生送ってんな。高校一年生で何をやらされてんだか。・・・ちょっとまて、という事は、
「俺達が今から同じ事をやるのか?」
「奴が言っていることが本当ならばそういうことらしいな。同じ事をやるかどうかわからないがな」
「ちょっと待て」
ちょっと待て、ちょっと待て、待て待て待て待て!
「お前はもちろん強いんだよな?」
「多分この中では一番強いだろうな」
悪びれもせずに答える。余裕のある顔だ。
「あ?」
絵流が割り込んでくる。絵流は強い。こいつの本気は見た事はないがきっと神埼より強いと思う。殺し屋か何かは知らないが圧倒的に強い。しかも簡単に言えば負けず嫌いだ。一番強いと言われて黙っていられなかったのだろう。気も短いし。しかしここはそんな事を話している暇がない。
「絵流まて。少しまて。事実確認をし終わるまで待て。まあ、神崎お前は強い。それは分かった。そうだろう。強くなきゃ戦うなどという戦略はとらない。有る程度の自信があるのは分かる。しかしお前は置いておこう。空蝉は?」
空蝉に話を振る。少し考えてから答えた。
「そんじょそこらの奴よりは」
空蝉もだろうな。あんなこと出来る奴が弱いわけが無い。
「田尾さんは?」
俺は田尾さんを凝視する。怖いと思われるかもしれないが、それど頃じゃない。
「ま、まぁ力は弱いですけど強いとは思いますよ?」
・・・・・・田尾さんも・・・・・・おそらく俺より強いという何かがあるのだろう。
「そう言えば矢倉さんの能力って『狂運』って言ってましたよね?どんな能力なんですか?」
ちょ、田尾さん、こんなタイミングで・・・。
・・・・・・三人が俺を見る。絵流は興味なさ気に俺を見ている。
・・・・・・・・・・・・・・なんだよ。
「俺は何もないぞ」
正直に答える。ここで手から火や風の玉を出したり口から雷出したり死神の格好したり魔法を唱えたりすれば、そりゃあ納得するかもしれないが。俺には本当に何もない。さっきのグレイが間違って俺を拉致ったんじゃないか?って正直思う。俺の人生の中で突拍子もない出来事などない。それが日常生活のことに関してもだ。この平穏な日常生活が乱される事など一度もなかった。イチゴ柄の下着を見た事もないし空から女の子が落ちてきた事ももちろんない。普通と形容する意外どうしようもない人生だ。もちろんそれを幸せとか不幸だとかも思ったことはない。しかし思う、普通が一番なのだろうと。
「・・・一般人って事ですか?」
「ああ、『狂運』なぞ聞いたこともない。至ってしがない普通のパンピーだよ」
思っている事を答える。それ以上は何も言う事がない。
「少しいいか?」
絵流が口を出す。珍しい。基本的に他人のことなど無関心なので人が話し合っている所に割り込んでくるのはほとんど見た事が無い。
「なんだ?」
絵流の話を優先して聞くことにする。こいつが口を開くときは、意味が無いことが無い。つまりは意味がある。
「いい加減気づけ。お前ら。これは明らかにおかしいだろう。都合が良すぎる」
俺一人に対してではなく、ここにいる四人にむけて話をする。
皆互いに顔を見合わせる。・・・どういうことだ?
「星は外すとしても、このクラスにこんな四人がいる事自体おかしいだろうが。ただの偶然にしてはどれくらいの確立だ?俺は昔からこの地域に住んでいる。先祖代々だ。お前らがこの学校をどうやって選んだかは知らないが他人に言われてこの高校を選んだのか?」
皆一斉に首を振る。俺は一番近い学校がここだったし、偏差値的にも余裕で受かりそうだったからだ。それぞれ他の四人にも理由はあるだろう。絵流は俺と同じく学校が近いから、という理由だったはずだ。
「皆が同じ理由のはずは無い。もしかしたら他人に誘われた奴もいるかもしれない。しかしここのクラスにこの四人が集まっているのはおかしいだろう?異能な奴らがだ」
・・・・・・そう言われるとそうだ。そもそもこんな奴らがいる事自体信じられないのに、しかもそいつらが同じクラスにいるってことはあり得ないと思う。
「という事は何だ?誰かに仕組まれているってことか?」
「そうは言っていない。仕組まれているって事も有り得るが、こんな奴らが仕組まれた事に四人とも気付かないということは有り得ないんじゃないか?」
「まあお前はともかく・・・・・・このメンツを見ればそうかもな。それじゃあ何だ?ただの偶然にしてはおかしいんだろう?」
少し突っかかる形で絵流に聞いてしまう。こいつの話は回りくどくて面倒くさい。
「さっき変な奴が言ってただろう。それを鵜呑みにするとだ、この五人の中では一番異常、最高にして最悪。『クレイジーラック』つまりは『狂運』の持ち主。全ての元凶、幸運の原点、運命の特異点、ありえない存在。神の間違い。そして最後に「最高の運」と「最低の運」を同時に併せ持つ。つまりはお前のせいなんじゃないか?」
「へ?」
話が一気に飛んだ気がした。何?このメンバーがここにいるのは俺のせいか?どういうことだ?
「このメンバーは互いに知らずにこのクラスに集まっていた。それぞれが何事かを抱え込み、少し話がこじれるだけで恐らく、このクラスと言わず学校、地域、市、都道府県までもが巻き込まれていた可能性がある。しかも高確率にだ。それが四人もいる。単純に四倍。しかしながら誰一人として巻き込まれてなどいない。このまま行けば互いに互いの秘密などを知らずに卒業していったはずだ。そのはずだった。しかしこいつが拉致と言う不運に巻き込まれた」
そう言うと得るが俺を指差す。確かに・・・あれが無ければ俺達はたいした接点など持たずにこのまま生活していくはずだった。
「さっきの言葉を鵜呑みにするのなら、こいつの「不幸」と「幸福」の天秤が傾いたわけだ。これからがどうなるかは分からないが今までのいきさつから考えて、星にはそういう能力・・・・・・違うな、運がある」
「・・・・・・・・・マジか」
そんなの俺自身が信じられない。っつーかなんだそれ?本気なのか?
「と思う。以上が俺の推理だ。当たっているか外れているかは分からん。しかしそれが本当だとすれば・・・・・」
絵流が沈黙する。何だよ。その続きを早く言え。推理でもなんでもいい。
「お前、何でも有りになるぞ」
・・・・・・・・・・・・なんだよ。それは。